雪中歩行の用具
雪中歩行の具初編に其図を出ししが製作を記さず、ふたたびその詳なるを示す。

◯藁ひとたけにてあみたつる。はじめはわらのもとを丸けてあみはじめ、末にいたりてわらをまし二筋にわけ折かへし、
◯をはりはまん中にて結びとむる。是雪中第一のはきもの也。童もこれをはく也。上品なるはあみはじめに白紙を用ひ、ふむ所にたたみのおもてを切入る。

◯是はうちわらにて作りあむ。常の韈(たび)のまま是をはきて雪中に歩行しても、他の坐につく時足をそそぐにおよばず。あみやうは甚むづかしきものなり、此図は大略をしるす。
◯他国には革にて作りたるを見る。泥行には便なるべし。我国の雪中には途に泥ある所なし、ゆえにはき物はげたの外わらにてつくる。げたに、●駒の爪●牛のつめなど、さまざま名もあり、男女の用その形もかはれど、さのみはとて図せず。

◯ハツハキといふは里俗のとなへなり、すなはち裹脚(はばき)なり。わらのぬきこあるひは蒲(がま)にても作る。雪中にはかならず用ふ、やまかせぎは常にも用ふ。作りやう図を見て大略を知るべし。やすくいへばわらのきやはんなり。わらは寒をふせぐものゆえ、雪のはきもの大かたはわらにて作るなり。

◯シナ皮とて深山にある木の皮にて作る、寸尺は身に応じ作る。大かたはたて二尺三寸(約70cm)はば二尺(約60cm)ばかりなり、胸あてともいふ。前より吹つくる雪をふせぐために用ふ、農業には常にも用ふ。他国にもあるなり。

◯シブガラミはあみはじめの方を踵へあて、左右のわらを足頭へからみて作るなり。里俗わら屑のやはらかなるをシビといふ。このシビにて作り、足にからみはくゆえに、シビガラミといふべきをシブガラミと訛りいふなり。

◯かんじきは古訓なり、里俗かじきといふ。たて一尺二三寸(約38cm)よこ七寸五六分(約23cm)、形図の如くジヤガラといふ木の枝にて作る。鼻は反してクマイブといふ蔓又はカヅラといふつるをも用ふ。山漆の肉付の皮にて巻かたむ。是は前に図したる沓の下にはくもの也、雪にふみこまざるためなり。

◯すかりはたて二尺五六寸より三尺余(約75cm〜90cm)、横一尺二三寸(約38cm)、山竹をたわめて作る。
◯かじき○すかりのニつは冬の雪のやはらかなる時ふみこまぬ為に用ふ。はきつけぬ人は一足もあゆみがたし。なれたる人はこれをはきて獣を追ふ也。

右の外、男女の雪帽子雪下駄、其余種々雪中歩用の具あれども、薄雪の国に用ふる物に似たるはここに省く。

百樹曰、余北越に遊びて牧之老人が家に在し時、老人家僕に命じて雪を漕形状を見せらる、京水傍にありて此図を写り。穿物は、○橇(かんじき)○縋(すかり)なり。戯に穿てみしが一歩も進ことあたはず、家僕があゆむは馬を御するがごとし。(北越雪譜 二編巻之一より)

撮影協力:森の学校キョロロ